コンテンツへスキップ

カート

カートが空です

記事: 「うちの子は大丈夫」という油断|デンマーク452人調査で見えたBOASグレーディングの本音

「うちの子は大丈夫」という油断|デンマーク452人調査で見えたBOASグレーディングの本音

はじめに

「うちの子はいびきをかくけど、フレンチブルドッグだから普通だよね」。そう思ったこと、ありませんか。

デンマークで行われた飼い主452人への大規模調査から、その"普通"という感覚こそが、深刻な症状の見逃しにつながっている実態が見えてきました。学術誌Frontiers in Veterinary Scienceに掲載された、信頼性の高い調査です。日本のフレンチブルドッグ飼い主にとっても、他人事ではない内容をお伝えします。

56%は「不健康」、64%は「うちは例外」

この調査は2023年10月、デンマーク・ケネルクラブとフェイスブックのフレンチブルドッグ関連グループを通じて実施されました。回答総数653件のうち、452件が有効回答として分析されています。

まず目を引くのが、飼い主の意識に見られる矛盾です。56%の飼い主が「フレンチブルドッグは他犬種より健康面で劣る」と認識している一方で、64%は「自分の犬は同犬種の平均より健康だ」と考えていました。

品種全体の健康問題は理解していても、自分の愛犬だけは例外だと思ってしまう。この心理、身に覚えがある方も多いのではないでしょうか。

実際に報告された健康問題の内訳を見ると、アレルギーが36.7%、呼吸器の問題が29.6%、脊椎の問題が19.0%という結果でした。呼吸器の問題は、実に3頭に1頭近くが経験しているという計算になります。

症状に気づいても6割しか受診しない

さらに注目したいのが、症状への対応です。呼吸に問題があると回答した134名のうち、実際に獣医師に相談したのはわずか60.4%(81名)にとどまりました。

つまり、約4割の飼い主は、呼吸の異常に気づいていながら受診していないということです。研究チームは、飼い主が呼吸困難を「品種の標準的な特性」として正常化してしまう傾向があると指摘しています。

「ガーガー」という呼吸音や、運動後になかなか息が整わない様子。それを個性やかわいらしさとして受け止めてしまう気持ちは、とてもよくわかります。でも、その"普通"の背後に、治療が必要な状態が隠れているかもしれません。

短頭種気道症候群(BOAS)は進行性の疾患です。放置すると症状が悪化し、熱中症のリスクも高まります。「うちの子はこういう子だから」で片づける前に、一度専門的な評価を受けてみる価値は十分にあります。

それでも8割が支持するグレーディング制度

この調査で希望が持てるのは、飼い主の意識そのものは前向きだという点です。BOASグレーディング制度について、66%の飼い主が「聞いたことがある」と回答し、85.0%が「良い取り組みだ」と支持しました。

BOASグレーディングとは、犬の気道の状態を段階評価し、繁殖に適した個体かどうかを判断する仕組みです。イギリスなど一部のヨーロッパ諸国では、繁殖時の健康評価としてすでに活用が広がっています。

さらに印象的なのは、これから子犬を迎える予定の飼い主のうち79%が「グレード評価を受けた親犬から生まれた子犬を選びたい」と答えていることです。

研究チームはこの結果について「飼い主は問題を認識し、原則としては解決策を支持している。しかし、それを実際の需要、つまり健康な犬を選ぶという行動に変えるには、より強い啓発活動とブリーダーの説明責任、場合によっては規制の後押しが必要になるだろう」と分析しています。

意識と行動の間にあるギャップを埋めること。それが、この調査が私たちに投げかけている宿題と言えそうです。

よくある質問

Q1. BOASグレーディングは日本でも受けられますか? 現時点で、日本国内にヨーロッパと同様の公式なグレーディング制度は整備されていません。ただし、聴診や運動負荷試験などで気道の状態を確認できる動物病院はあるため、気になる場合はかかりつけ医に相談してみましょう。

Q2. どんな症状があればBOASを疑うべきですか? 安静時でも聞こえる呼吸音、少しの運動ですぐ息が上がる、暑い時期に極端に苦しそうにする、寝ているときに呼吸が止まって見える瞬間がある、といったサインが目安です。

Q3. いびきをかく子はみんなBOASなのでしょうか? いびき自体は必ずしも異常とは限りませんが、頻度や強さ、日中の呼吸の様子と合わせて総合的に判断する必要があります。気になる変化があれば早めの受診がおすすめです。

Q4. 「うちの子は例外」と思ってしまうのはなぜですか? 研究では明確な理由までは特定されていませんが、日々一緒に過ごす中で症状に慣れてしまうことや、愛情ゆえに深刻に捉えたくない心理が影響している可能性が考えられます。

Q5. この調査結果を今日から生かすには何をすればいいですか? 「うちの子だから大丈夫」という思い込みを一度脇に置いて、呼吸の様子を客観的に観察する日を作ってみてください。動画に撮って獣医師に見せるのも有効な方法です。

まとめ

デンマークの調査が教えてくれたのは、飼い主の愛情の深さと、それゆえに生まれる見落としが表裏一体だということです。56%が品種の健康問題を認識しながら、64%が自分の犬だけは例外だと感じる。この矛盾は、日本のフレンチブルドッグ飼い主にとっても決して遠い話ではありません。

「かわいい寝息」「個性的な呼吸音」。そんな日常の中の小さなサインに、少しだけ意識的な目を向けてみる。それだけで、愛犬の健康を守る一歩になるはずです。

Read more

フレンチブルドッグの子犬ワクチン・健診完全スケジュール|迎えた日から始める予防計画

子犬を迎えたその日から始めたい、ワクチンと健診のスケジュールを時系列で解説。短頭種ならではのチェックポイントもまとめました。

もっと見る

英国がフレンチブルドッグの「かわいさ」の基準を変えた理由

はじめに あの潰れた鼻、垂れたシワ、ぺたんとした顔。フレンチブルドッグの「かわいい」を形づくっているパーツが、実は呼吸を苦しくする原因でもある——そう聞いたら、どう感じますか。 2021年12月、英国の公式犬種団体ザ・ケネルクラブが、フレンチブルドッグの犬種標準(ブリーディングの指標となる公式ガイドライン)を改定しました。理由はシンプルです。「かわいい」と見なされてきた極端な顔立ちが、健康問...

もっと見る